中核企業と個々の事業所によるオウンドメディアは、網羅性を担うマスメディアとしての企画情報を発信するよりも、組織固有のブランディングと重なる一貫した意思（意志）を明確にして、そのコンセプトに共感する「相性の良いお客様」とつながるための「情報編集企画×体感企画×商品」を組み合わせることから独自の商品やサービスを展開する。これがMASAプランニングラボの情報戦略の考え方です。

1. 背景と狙い

山口銀行を含む山口フィナンシャルグループ（YMFG）は、銀行業務だけでなく「地域商社」「投資ファンド」「コンサルティング」など幅広い事業を展開しています。
今回の観光情報発信は、広島～博多間の通過観光客を「山口に立ち寄らせる」ことを目的に、旅行代理店と連携して行われています。これは瀬戸内DMO（官民連携の観光マーケティング組織）とも関係する広域誘客戦略の一環です。

2. なぜ「マスメディア的発想」なのか

既存の観光行政や観光連盟の情報発信は、自治体や観光協会が中心で、比較的「行政的・広報的」な色合いが強い。
一方で金融グループが関わると、広告・販促・事業収益を意識した「メディア産業型」発想が入り込みます。
- 旅行商品販売による手数料収入
- 広告枠やスポンサーシップによる収益
- 地域商社事業との連動（地元産品の販売促進）

つまり「情報発信＝観光誘致」だけでなく、情報発信＝収益事業という二重の意味を持たせているのです。

3. 効果とリスク

効果:
- 通過観光客を「立ち寄り客」に変えることで、宿泊・飲食・買い物の消費を増やし、地域経済を潤す。
- 金融グループ自身も「旅行商品販売」「広告収入」「地域商材販売」で収益を得られる。
リスク・課題:
- 行政や観光連盟の発信と重複し、情報が乱立する可能性。
- 「金融グループの事業収益目的」と見られると、観光客や地域住民からの信頼性が揺らぐ。
- 持続的な観光誘致には、単なる情報発信以上に「体験価値の創出」が不可欠。

4. まとめ

山口銀行ファイナンスグループの取り組みは、観光誘致と金融グループの事業拡張を兼ねた「地域メディア産業化」戦略と捉えるのが妥当です。行政的な観光広報とは異なり、広告収入や旅行事業収益を視野に入れた「ビジネスモデル」としての情報発信であり、地域ブランド形成と収益化を同時に狙っています。

「地域ブランドの持続的浸透」と照らすと、このような金融グループの動きは、地域経済のネットワーク化を進める一方で「情報の乱立によるブランドの希薄化」という課題も孕んでいます。ここをどう整理・統合するかが、今後の戦略的ポイントになりそうです。

2.地域中核企業による情報戦略と役割～異業種ネットワーク

MASAプランニングラボの情報戦略との対応

地域中核企業のメディア戦略の役割を、「地域に根ざして営業する市町村単位の企業（例：地域ブランド化を担うホテルなどの施設）」に置き換え、その企業が「施設の研修活用から研修ビジネスをリードする」モデルにおける異業種ネットワークの仕組みと役割を、MASAプランニングラボの情報戦略の考え方を参照して解説します。

自働車販売会社や住宅販売会社など地域経済を担う企業が、既存の販売商品とのシナジー効果を生み出す新規ビジネスとして運営することも可能です。

このモデルでは、中核企業の目的が「地域経済の活性化」と「自社施設の利用促進・新たな収益源（研修ビジネス）の確立」に変わります。

1. 異業種ネットワークの仕組み：研修ビジネスの「インハウス」化

中核企業（ホテル/施設）は、自社の施設と地域資源という強みを活かし、研修ビジネスをリードするためのノウハウを「インハウス業務」として確立します。

2. 異業種ネットワークの役割：研修体験価値の具現化と地域連携

ネットワークの役割は、「施設の研修利用」という体験価値を地域全体で高め、中核企業とネットワーク参加企業双方の収益拡大に貢献することにあります。

A. 研修体験価値の具現化と「相性の良いお客様」との接続

地域資源の活用: ネットワークに参加する農業法人、伝統工芸事業者、飲食店などから、研修プログラムに組み込む地域体験プログラム（体感企画）を調達します。
研修ニーズとのマッチング: 中核企業が持つ研修ノウハウ（情報編集力）を活用し、企業が求めるブランディングや組織開発の目的に沿うよう、自社施設と地域体験を組み合わせた独自の商品・サービス（研修プログラム）を展開します。これにより、施設のコンセプトに共感する「相性の良いお客様」と確実につながります。
事例: ホテルが地域の漁師やNPOと組み、「サステナビリティとチームワーク」をテーマにした体験型リーダーシップ研修を提供する。

2. 異業種ネットワークの役割：研修体験価値の具現化と地域連携

B. 収益源の多様化と地域経済の活性化

施設の稼働率向上: 宿泊・会議室の利用だけでなく、高付加価値の研修サービスとして販売することで、閑散期の施設稼働率と客単価（ADR）を向上させます。
地域への利益還元: 研修プログラムの実施により、ネットワーク参加企業（地域事業者）にプログラム提供料や物品購入が発生し、地域経済全体に収益が分散されます。
ブランド力の向上: 中核企業（ホテル）は、単なる宿泊施設から「地域課題解決型の教育・開発プラットフォーム」へとブランドを高め、研修ビジネスをリードする存在としての**一貫した意思（意志）**を明確にします。

3.個々の企業や専門店の情報戦略～個々が考え行動する組織へ

MASAプランニングラボの情報戦略に基づき、個別企業（専門店）が採用すべきコンセプト型の情報戦略と、体感イベントを活用した「相性の良いお客様」とのつながり強化、コミュニティ形成の仕組みについて解説します。

🎯 個別企業のメディア戦略：コンセプト型情報戦略とコミュニティ形成

個別企業（専門店）の情報戦略は、網羅性を追求するマスメディアや地域連携を担う中核企業のネットワークとは異なり、**組織固有のブランディングと一貫した意思（意志）**を明確にし、「相性の良いお客様」と深く強いつながりを築くことに焦点を当てます。

1. コンセプト型情報戦略の仕組み：一貫した意思の明確化

個別企業の情報戦略の核は、情報編集企画 × 体感企画 × 商品企画の組み合わせであり、これをオウンドメディアを通じて発信します。

2. 体感イベントによるつながりの強化とコミュニティ形成

情報発信で獲得した「相性の良いお客様」との関係性を強化し、事業の安定的な基盤とするために、体感企画としてのイベント活用が重要になります。

A. 体感企画（イベント）の役割

情報の実体験化: オウンドメディアで発信した情報編集企画を、実際に体感できる場を提供する。
パーソナルな接続: 顧客が持つ個別の課題やニーズを対面で把握し、深い信頼関係を築く。

具体例: シニア向けAI自分史設計体験イベント

企画内容: 「AI × 情報編集力」という中核企業のノウハウ（またはそれに類似する技術）を応用し、専門店の意思（豊かな老後設計）に沿った自分史設計のミニ体験を提供する。
効果: イベントを通じ、顧客は専門店のノウハウ（情報編集力）と商品（サービス）の価値を体感し、コンセプトへの共感が具体的な購買意欲に結びつく。

B. コミュニティのような情報戦略

体感イベントを単発で終わらせず、継続的な「共有」の場とすることで、コミュニティへと発展させます。

双方向の情報共有: 顧客同士、および顧客と専門店の間で、イベントの体験やその後の行動に関する情報を交換する場（オンラインフォーラム、限定交流会など）を設計する。
組織・個（人材）の活用: 専門店側の人材（個）が、一貫した意思に基づき、コミュニティ内でファシリテーターや専門家として振る舞い、情報戦略を具現化する。
メリット: コミュニティは、リピーターの育成、口コミによる新規顧客の獲得、そして顧客の声を活用した新商品（商品）開発の源泉となり、事業の持続可能性を高めます。